中村うさぎ、その不思議な魅力

あえて連続引用↓


だってさー、知性やら才能に恵まれた男に限って
プライド高いだけの小心者だったり
自分が自分で見えてない愚か者だったりするんだよ。
一番、始末に負えない。
なぜなら、己の知性を活用することなく
勝手に腐っていってしまうからだ。



女ってのは、やれ太ってるだの、脚の形が悪いだの
ブスだの、服のセンスが悪いだの
男に比べていろんなことで劣等感を持たされる。
この上「部屋をきちんと片づけろ」だの「仕事もきちんとこなせ」だの言われちゃ
我々はどこで自己肯定すればいいのだ。
せめて「働く女は家が汚くてもよし!」、「専業主婦は外で働く能力がなくてよし!」
とか、その役割や能力に応じたOKサインを出してくれないと
女たちはもう壊れていくしかないではないか。
世間は女たちに多くを求めすぎる。
しかも、女たちを縛っているのは、男たちではない。
同じ女同士で足を引っ張り合っているのである。



特別な人間になりたい…、という思いが
私を苦しめる。
もっともっと賢く、美しく、誰よりも特別な人間になりたい。
この世の中でたった一人の私が、広い世間では特別でも何でもない
凡庸な人間の1人であるという事実が、私には腹立たしい。


花も実もない人生だけど
中村 うさぎ
角川書店
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中村うさぎと言えば
買い物依存症の人だとか、整形の人だとか
思われている気がしますが


「男」の実像・虚像と
「女」の実像・虚像と
「自己承認」の実像・虚像。


という極めてシンプルなことをベースに
言論活動を行っている人だと思います。



中村うさぎのエッセイは
男性目線で読むと
けっこう腹立たしいものが多いです。


基本的に、男たちが反論不可能なことを
たくさん書いているからです。


誤解を恐れずに言えば
男たちは、女性が言うことに「ガチ反論」できない
生き物です。
反論すればするだけ、彼女の言葉でいうと
「腐ってる」っていう話になってしまい、自分でもそれを自覚してるから。


男の情けなさを突かれたり、女はこんなに大変なのに
男はどうのこうのと言われると
もう、どうしようもないわけです。
それにガチ反論すること自体が、タブーなんだから。


しかし男性というよりも、中村うさぎ
ある種の女性にとっても
腹立たしいエッセイを書いてると思います。
むしろ、こっちのほうに
ムッときてる女性読者は多そうだけどね…。



男も女もイヤなら読まなきゃいいだろ、って話ですが
これがまた面白いから読むんです。
そこに不思議な魅力があります。


それはなぜでしょう?


性と自己承認という
あまりにベタすぎるテーマを
ここまで赤裸々にしてくれる人が
他にいないからでしょうか。


そりゃ分かってるけど
言わないことにしてるんだよ、考えないことにしてるんだよ
っていうテーマに対し
ズカズカ切り込んでくれるからでしょうか?
しかも極めて論理的に…。



我々は中村うさぎを読むことで
どっか遠くに封じ込めた自分を
呼び戻しているのかもしれません。


ああ、本当はこれ
俺も(私も)思ってたんだよ!
でも自分では絶対に言えないことなんだよ!
っていう感じなんだろうか。



しかし、中村うさぎとは違う
性や自己承認の捉え方もある気がします。
それが東京学芸大の現代文化研究会の『F』です。

これも順次、紹介します。